血管を若々しく保つことは、老化を防ぐ上で重要なことは皆さん、百も承知です。
日頃からの食生活や生活リズムにより、良くも悪くも変化してしまいます。
すべてまっすぐに繋げるとおよそ10万km(赤道の約2.5倍の長さ)に及ぶ血管。
その中でも一番怖いのは、動脈硬化です。
この記事では、血管について深く知るとともに、血管が引き起こす体への変化や、日常で食生活以外に何をしていけば良いのか?動脈硬化を予防するには?血管に一番良いウォーキング法などを書いていきます。
目次
血管は3層でできていた
動脈の血管は、内膜・中膜・外膜の3層構造でできています。
外膜は、血管の外壁で弾力に富む線維性結合組織(皮下組織、粘膜下組織と同じもの)でできていて、血管の外から血管に必要な栄養を取り込んでいます。
中膜は、平滑筋細胞(臓器の壁の同じもの)とエラスチンという弾性に富んだ成分でできていて、分厚い構造になっています。血管の収縮や拡張の運動を支えています。
内膜は、一層の血管内皮細胞でおおわれています。この血管内皮細胞は物質を放出し,血管の収縮・拡張を調節するほかに、血管の炎症を防ぎ、血栓の形成を防ぎ、血管の保護をしています。
中でも、内膜にある血管内皮細胞の機能が低下したり、減少することで、血管の内壁が守られずに、異常を起こしやすくなるわけです。
動脈硬化を予防し改善を考えていくうえで、非常に重要になってくるのが、この血管内皮細胞です。
動脈硬化は3種類
動脈硬化は、粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)、細動脈硬化、中膜硬化(メンケベルグ型硬化)に分類されます。個別に詳しく見ていきましょう。
粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)
肥満や内臓脂肪、高脂血症が一番の原因となります。
おかゆの様な状態になるみたいですが、どういう事なんでしょう。
大動脈(胸大動脈や腹大動脈)や脳動脈、冠状動脈(心臓の栄養血管)などの比較的太い動脈に起こる動脈硬化です。
動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなるドロドロした粥状物質がたまってアテローム(粥状硬化巣)ができ、次第に肥厚することで動脈の内腔が狭くなるといわれています。
内膜の血管内皮細胞が正常に働いているかが、関係してくるようです。
細動脈硬化
脳や腎臓の中の細い動脈が硬化して血流が滞る動脈硬化です。高血圧症が長く続いて引き起こされることの多いのが特徴です。
心臓の冠状動脈のよる狭窄症や、腎臓の細動脈による腎硬化症がこれにあたります。
心臓から出た動脈の末端の段階を毛細血管といいますが、細動脈はその一歩手前の段階を指します。
動脈が加齢と共に老化し、弾力性が無くなり硬化したり、動脈内に物質が沈着して血管が狭くなるのです。
中膜硬化(メンケベルグ型硬化)
中膜にカルシウムが染み込んでたまることで起こる動脈硬化です。大動脈や下肢の動脈、頸動脈に起こる動脈硬化です。
糖尿病や透析患者やカルシウム代謝異常を引き起こすしやすい動脈硬化です。
内膜が侵されないので狭窄は生じませんが、血管の伸縮性は失われ、破綻すると生命に関わる大出血を起こします。
動脈硬化の原因を掘り下げる
高血圧 脂質異常症 糖尿病 肥満 運動不足 アルコール 加齢 ストレス 食生活 喫煙 などが一般的な原因と言われています。
なんとなく、悪いということはわかりますが、どうやってコレステロールが血管にへばりついたり、粥状にプラークを形成してしまうのかを知りたいところです。
原因は色々ありますが、本質的な原因は、活性酸素による酸化により細胞がダメージを受けることだと言われています。
血管で最も重要なのは、内膜の血管内皮細胞です。
血管内皮細胞と活性酸素の関係性を解いていくと、本当の原因を知ることができます。
高血圧や糖尿病、血液の脂質異常は、この血管内皮細胞に負担をかけることで傷つけて機能障害を引き起こします。
傷ついた血管内皮細胞から炎症や酸化を引き起こす活性酸素が発生します。
そこにLDL(悪玉)コレステロールが入ってきて、活性酸素によってLDLも酸化されます。
酸化されたLDL(酸化LDL)をマクロファージ(血管内の掃除役である貪食細胞)が、好んで食べるという性質があり、どんどん酸化LDLを取り込みマクロファージが膨れ上がります。
膨れ上がったマクロファージは、コレステロールをたくさん含んだまま、血管内皮細胞の奥に沈着するのです。
これがプラーク(粥状動脈硬化)の元となり、増えていくと血管を狭くしてしまうのです。
動脈硬化で起きる怖い病気
1、心臓の栄養血管である冠動脈が狭くなって起こる「狭心症」
2、大動脈にこぶ状の固まりが出来て血管を狭くする「大動脈瘤」
3、詰まることで起こる「心筋梗塞」
4、脳の血管が破れることで起こる「脳出血」
5、脳の血管が詰まることで起こる「脳梗塞」
特に脳の疾患は、認知症の原因にもなるので、合わせて下の記事もお読み下さい。
6、主に手足、特に下肢の血管が動脈硬化によって硬く細くなって狭くなったり詰まったりする「閉塞性動脈硬化症」
7、目の網膜にある血管の変性「網膜動脈閉塞症」
8、末梢動脈が細くなったり血栓ができたりして十分な血液が保てなくなる「閉塞性血栓性血管炎」
このような事態になる前に、動脈硬化を防がなくてはなりません。
血液検査から動脈硬化を自分で知るための指数
動脈硬化を数値で見ることができます。
LH比と言います。コレステロールのバランスのことです。
以前は、悪玉コレステロール(LDL)が少なければよいという考え方でしたが、近年ではLDLコレステロールが正常値の140未満の人でも心筋梗塞になるケースがあり、また、HDLコレステロールが高い人でも、動脈硬化を起こすことあるため、新たな指標として、LH比を基準にしています。
計算法は、LH=LDL(悪玉)コレステロール÷HDL(善玉)コレステロール
LDL100÷HDL50=2.0 LDL80÷HDL50=1.6
こんな風に計算します。
また、中性脂肪の数値が高くなると、動脈硬化の因子の一つになる可能性があります。
その理由は、中性脂肪が増えすぎると、LDLコレステロールが増え、HDLコレステロールが減りやすくなるからです。
こんなふうに、ただ数値が高いかどうか見るだけではなく、LH比を計算して出してみると、ご自身の動脈硬化をチェックできるとともに、今後の動脈硬化を予防し、改善するための指標になると思います。
動脈硬化を自分で知るための体の場所
体の見た目に動脈硬化の症状が現れていることをご存知でしょうか?
動脈硬化のチェックとして役に立つ情報を紹介します。
1、耳たぶ
動脈硬化が進んでいると、耳たぶに縦線や横線が入るようです。
2、アキレス腱
アキレス腱が通常より太くなる。家族性の高コレステロール血症の人に多いようです。
3、腎臓あたりから不思議な音
腎臓のあたり(腰辺りから)不思議な音がするそうです。
4、食後の眠気
通常の人でも、食事をして血糖値が上がり眠くなりますが、動脈硬化が進んでいる眠気は、寝たのに気づかないくらい強烈に落ちるように襲ってくるようです。
5、目頭の黄色いしこり
これはモナリザですが、目頭の内側に白く写っているのがわかります。
動脈硬化が進むと、このように脂肪のようなものが目頭の横や上にできるようです。
6、舌の裏の血管が紫色
写真では正常ですが、この舌裏の血管が濃い紫色に変わるようです。
このように、動脈硬化の症状として、見た目にも分かるときがあります。もしも、自分で見つけたときには、早めに血液検査をして、数値を確かめる必要があります。
動脈硬化は聞くけれど、静脈硬化ってないの?
静脈には、動脈のように高い血圧が加わっていないので、動脈のように硬くなりません。
静脈は圧力が低いので、動脈より破れにくく、うっ血したり、むくんだりするだけで終わるからです。
しかし、硬化する場合もあるのですが、問題にならないだけです。
その理由は、静脈には血液の代わりの通り道がたくさんあり、もし詰まっても、別の静脈(逃げ道となる静脈)を通って血流を維持できるので、動脈梗塞のように重症化はしないからです。
動脈を柔らかく保ち、血圧を正常化には?
ここまでの内容で、動脈硬化を防ぐには、
1,血圧を正常に保つこと
2,血管を柔らかく保つこと
3,脂質異常を防ぐこと
この3つが最重課題とわかります。
もちろん、食生活や生活習慣の改善は必要ですが、動脈硬化を予防する運動としてウォーキングがどれほど効果的で優れているかを説明していきます。
1,血圧を正常に保つには?
一般的に適切な運動療法が軽~中等症の高血圧患者さんの血圧降下に有効であることは、いくつかの調査によって実証済みです。
運動を続けることによりタウリンやプロスタグランディンといった血圧を下げる物質の体内での産生が促進され、逆にカテコラミンなどの血圧を上昇させる物質の産生が減少することなどが挙げられています。
特にプロスタグランディンは、痛みを感じさせる物質で、毛細血管が壊れることで分泌されます。
毛細血管が壊れる感覚とは、
・自分の筋肉が伸びる心地よい痛さ
・筋肉を使い収縮させたときの軽いつらさ
と考えられます。
ですから、ダラダラで関節の可動が少なく、筋肉の伸びや収縮を感じないウォーキングや運動では、動脈硬化を予防する効果が薄れてしまいます。
全身の筋肉を使う正しい歩き方でウォーキングすることが最適と言えます。
しかし、高血圧の場合には、負荷の強い運動は、逆に血圧を上昇し、血管を傷つけて、血栓を作りやすくさせてしまうので要注意です。
2,血管を柔らかく保つ
動脈硬化を調べる方法で、脈派伝播速度(PWV)の計測があります。
血管が硬いほど、血管壁が厚いほど、そして血管の太さが細いほど、脈派伝播速度は速くなり、動脈硬化の進み具合を示すのです。
アメリカ・バージニア大学などの研究で、ストレッチをするだけでも脈派伝播速度が遅くなり、動脈硬化にブレーキがかかることが明らかになっています。
ここでも筋肉の伸びが重要なのがわかると思います。
筋肉がきちんと伸ばされるには、関節がきちんと幅広く動く必要があります。
多くのひとは、関節の幅を広げて歩いていません。
広げていたとしても、体より前に前に足を投げ出して歩く、偏った歩き方なのです。
もも裏歩きは、真逆の後ろへ大きく歩幅を広げる歩き方なので、関節の可動域を維持しながら、筋肉の伸びを感じることができます。
結果、動脈硬化を防ぐ運動として、血管を柔らかく保つ効果も期待できるのです。
3,脂質異常を防ぐこと
LDL(悪玉)は、細胞膜をつくったり、神経を保護したりするコレステロールを全身に運ぶ運搬役。一方、HDL(善玉)は、血管にへばりついた古いLDLコレステロールを回収するお掃除係です。
運動をすると、悪玉LDLこそ減らないものの、善玉HDLが増えるという効果があります。
つまり、運動は「血管内のお掃除力」を高めるということです。
そう、残念ながら運動によって悪玉コレステロールは減らないのです。いくら運動量を増やしても減らないという結果が出ています。
しかし、善玉HDLを増やすことで、プラークを作らずに血管を修復してくれる要素を増やすことになります。また、LH比の数値を下げることになり、動脈硬化を防いでいるという指標にもなるのです。
筋のリポプロテインリパーゼ活性(肝臓以外の脂肪組織や筋肉などの毛細血管内皮細胞表面に存在し、中性脂肪を分解する脂質分解酵素)が増大し、トリアシルグリセロール(血中カイロミクロン・VLDL・LDL)の分解を促進させることにより、HDLを増やすことが関与していると考えられています。
つまり、血管内皮細胞の中にリポプロテインリパーゼという物質が存在し、運動により活性化され、善玉HDLが増えるのです。
そのためには、厚生労働省も中等度の強度の運動が必要と言っています。さらに、血中脂質レベルは1回の運動では影響を受けません。そのため血中脂質レベルに好影響を与えるには数ヶ月以上の長期的な運動が必要です。
とろとろと長時間ウォーキングしても、軽度の運動になってしまうので、筋肉に負荷を掛けた中等度の強度があるウォーキングが必要です。
勝手に中等度の強度になってしまうのが、もも裏歩きウォーキングの特徴でもあります。
動脈硬化を予防する運動として、もも裏歩きウォーキングを推奨できるわけが、これらの理由です。
この記事のまとめ
・血管は3層でできていて、内膜の血管内皮細胞が一番重要
・動脈硬化には3種類ある。
・その中でも粥状動脈硬化によって血管がつまることが多い
・酸化したLDL(悪玉)コレステロールがプラークを作る
・動脈硬化による病気は下肢にもある
・動脈硬化を自分でしる計算法(LH比)がある
・動脈硬化が外見で分かる場所がある
・静脈も硬化する場合があるが重症化しない
・動脈硬化を防ぐ方法は、主に3つある
・筋肉を大きく使うことで、動脈硬化を防ぐことになる
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