高齢化社会に突入する日本では、認知症の予防も火急の課題です。2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者と言えます。
誰もが思っているはずです。
「ボケる前に死にたいわ」「ボケて家族に迷惑をかけたくないわ」「ボケて行きているんだったら死んだほうがマシだわ」と。
しかし、認知症に罹ればそんなことを思うことすらなくなってしまうのです。
ボケている自分をボケていると自覚できなくなってしまい、忘れていることすら、忘れてしまうです。
この記事では、認知症について深く知るとともに、自分が認知症に罹らないための策をお伝えしたいと思います。
目次
認知症と痴呆症の違いは?
最近、痴呆症という言葉を耳にしないのはお気付きでしたでしょうか?
実は、2004年に厚生労働省が、「痴呆」という用語は、侮蔑的な表現である上に、「痴呆」の実態を正確に表しておらず、早期発 見・早期診断等の取り組みの支障となっていることから、できるだけ速やかに変更すべきである。
「痴呆」に替わる新たな用語としては、「認知症」が最も適当であるということで、変えたようです。
確かに、痴呆の「痴」は、頭の働きがにぶい。思慮分別が足りない。ぬけている。おろか。という意味があり、
痴呆の「呆」は、愚か。ばか。と意味があり、そして阿呆の呆です。
そう考えると、とてつもなくひどい言葉であったことがわかります。
そういうわけで現在は、痴呆症は死語となっているのです。
認知症にも種類があります。
・アルツハイマー型認知症(記憶障害から始まるのが特徴)
脳の中にアミロイドβという蛋白質が溜まり、正常な脳の神経細胞を壊して脳を萎縮させる病気です。
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多いとされており、男性よりも女性に多く見られます。認知症の中でも最も多く、全体の約6割を占める病気です。
・レビー小体型認知症(幻覚を見るのが特徴)
脳の中にレビー小体という神経細胞にできる特殊なタンパク質が、集まりすぎることで神経細胞が壊れて減少し、神経を上手く伝えられなくなる病気です。
レビー小体型認知症は男性の方が多く、女性の約2倍と言われています。アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、約20%を占めています。
・脳血管性認知症(脳の障害を受けた部位によって出現する症状は異なるのが特徴)
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳の血管の病気が原因で、脳の血管異常が脳細胞の壊死を引き起こし、脳の機能を失う病気です。認知症の20~30%を占める病気です。
・まだら認知症
脳血管性認知症の一つで、脳血管の障害の部位に応じて機能が低下します。脳血管性認知症のまだ症状が軽いバージョンのことを言います。
・前頭側頭型認知症(FTD)(人格の変化や非常識な行動)
特殊な蛋白質が変化し蓄積することで、脳の前頭葉や側頭葉が委縮して起こる認知症です。40~60代に発症することが多く、男女差はありません。
・若年性認知症(若い人が認知症になったときの呼び名)
65歳未満で発症する認知症を言います。若年性と高齢者での認知症の病理的な違いはありません。女性よりも男性に多くみられます。
・アルコール性認知症(周りの状況が理解出来なくなったり、作り話をするのが特徴)
アルコールを多量に飲み続けた事により、脳梗塞などの脳血管障害や、ビタミンB1欠乏による栄養障害などを起こし、その結果起こるとされている認知症です。
60歳以上のアルコール依存症では認知機能障害を合併する割合が43.5%もあると報告されています。また、多量の飲酒が習慣化している人は、脳が小さく萎縮する割合が高いとも言われています。
・正常圧水頭症(iNPH)(歩行障害が出るのが特徴)
脳脊髄液が異常に頭に溜まってしまう事で、脳を圧迫し、障害を起こす病気を水頭症といい、認知症に似た症状が出ます。
クモ膜下出血、頭部外傷や髄膜炎など、何かしらの病気があって起こるものと、原因がなく起きるものとがあります。手術で治ります。
結局、認知症原因は何?
大きな原因としては、二つです。
1、よくわからないタンパク質によるもの。
アルツハイマー型認知症の場合は、アミロイドβというタンパク質が原因と考えられています。
アミロイドβとは?
脳にシミのような物ができてしまうとそれを「老人斑」と呼びます。
その老人斑を構成している大部分のタンパク質がアミロイドβなのです。
本来ですと、老人斑にならずに脳内のゴミとして分解され、排出されるものが、蓄積して斑点状に大きくなり脳細胞を死滅させると言われているのです。
しかし、このアミロイドβが認知症には直接関係しないのではないか?という医師もいます。
その訳は、亡くなった高齢者の脳の解剖して、同じように老人斑がたくさんあるにも関わらず、認知症の症状が全くなかった人も数多く存在しているからです。
2、脳の血管
脳の血管は、どうして切れたり詰まったりするのか?
動脈硬化に他なりません。そして動脈硬化には2種類あります。
血管が固くなるタイプ
血管が細くなるタイプは、主にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が溜まることが原因で起こります。
それが血管壁に入り込んで、コブのような形になり、血管を狭くしてしまうのです。
動脈硬化により血管が狭くなるタイプ
血管が固くなるタイプは、血管内にカルシウムが沈着して、石灰化と呼ばれる状態になることで起こります。
石灰化が起こると血管の伸縮性がなくなり、硬くなってもろくなるので、血管が切れやすく、詰まりやすくなるのです。
切れたり詰まったりした血管により、脳の神経脂肪に栄養が行かなくなり、脳細胞が死滅してしまうと、その部分の機能が絶たれるために認知症症状が出るのです。
そしてこの2つの脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症はかなり高い確率で合併します。
一般的には、認知症のうち、アルツハイマー病が約6割、血管性認知症が約2割と言われいますが、より厳密には「混合型認知症」が最も多いという見方もあるのです。
認知症とがん
がん経験者の人は、通常の人と比べて認知症になる確率が低くなるのをご存知でしょうか?
2013年国際アルツハイマー病学会で、興味深い発表がなされました。
それは、多くの癌において、癌の発症者はアルツハイマー型認知症リスクが有意に低いという論文を出したのです。
つまり、がんの病歴がある人は、アルツハイマー型認知症になる確率が低いと言うのです。
349万9378人の退役軍人のデータを用いて、19の異なる癌の有無とアルツハイマー型認知症の発症との関連について調べた。対象者は、登録時に認知症を発症していない65歳以上とした。平均年齢は71歳。
その結果、追跡期間中(中央値5.65年)に、8万2028人がアルツハイマー型認知症と診断された。うち24%が癌サバイバーで、76%は癌の発症がなかった人だったというのです。
癌にかかったことのある
癌がAD発症に対して何らかの抑制的効果を有し、「癌を促進させる遺伝子および分子経路は、一方で神経保護の効果があるのかもしれない」ということです。
逆に、認知症の人は、通常の人と比べてがんにならないという論文は、ありませんでした。
認知症と糖尿病
糖尿病の方はそうでない方と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告されています。
その1つ目の原因とされるのが、合併症である脳血管障害です。
注目すべきは、2型糖尿病のインスリンの抵抗性です。
糖尿病に関することは、こちらの記事を参考にしてください。
高脂肪食の摂取や肥満、運動不足やストレスにより、内臓機能が落ちてインスリンの効きが悪くなった状態がインスリン抵抗性です。
それと同じように、高脂肪食の摂取や肥満、運動不足やストレスなどの代謝ストレスが、脳の代謝を悪くしてしまうのです。
つまり、アミロイドβを除去する速度を低下させ、蓄積を促進させてしまうのです。元々インスリン抵抗性がある2型糖尿病のひとは、認知症になりやすいということになるのです。
認知症と運動
認知症に対する危険因子 医学的危険因子
1)メタボリック・シンドローム (高血圧,高脂血症,肥満,糖尿病)
2)脳梗塞,脳血管障害(高血圧が関与)
3)うつ病
4)頭部外傷,感染症(脳炎),
代謝異常 環境的危険因子
1)知的・社会的活動,無趣味,ひきこもり
2)食習慣:高カロリー食,高脂肪食
3)運動不足
4)睡眠不足
5)ストレス:死別(配偶者,ペット),苦悩,落胆,悲哀
6)喫煙
7)転居
ウォーキングさえしていれば、認知症にはならないと言う本を出している先生もいるくらい、認知症との相性が非常に良いのがウォーキングです。
有酸素運動をすると、下記のような作用があると言われています。
・脳の血流改善による酸素運搬能力の改善する。
・脳内の生体アミン(神経伝達物質を作る有機化合物)アセチルコリン、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、脳内のエンドルフィンなどの分泌を促す。
・刺激を脳へフィードバックする。
・フラストレーションやストレスを解放する。
その中でもアセチルコリンとセロトニンは、認知症にとっては重要な物質です。
数ある神経伝達物質の中で、アセチルコリンは目覚めさせる(覚醒)作用や活力を上げる(賦活)作用を持つ最も重要なもののひとつです。
アルツハイマー型認知症の一連の症状は、脳内のアセチルコリンの活性が低くなったために起きているのではないかとの仮説が立てられています。
アセチルコリンは、神経細胞の細胞体というところで作られます。それがシナプスと呼ばれる接合装置によって、違う神経細胞に送られます。
大部分が神経細胞の中の運動神経や自律神経の細胞で作られるのです。
睡眠と運動ににより、分泌量を増やすことができるのです。
セロトニンは、アセチルコリンの放出量の調節に関与しています。
その訳は、セロトニンの放出量が減少すると、シナプスの密度が低下します。
セロトニンは神経増殖を調節する因子であるとともに、シナプス形成が促進する作用もあるのです。
脳の神経伝達を活発にし、脳細胞を再生、活性化することで、認知症症状を防げると考えられます。セロトニンは、日光を浴びることと、適度な運動を行なうことで活性化されます。
筋肉を脳からの司令によって動いています。電気信号が神経細胞を伝わり運動神経に伝えられ使われているのです。
多くの筋肉を使えば、それだけ刺激は脳にフィードバックされ、さらに、脳細胞や神経伝達物質の分泌も活性化させらるのです。
もも裏歩きは、通常の足を投げ出す歩き方とは違い、多くの筋肉を使います。
「自覚できる物忘れ」つまり、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下していると自覚できる人は、認知症の一歩手前の状態【軽度認知障害(MCI)】かもしれません。
・昔から知っている物の名前が出てきにくい(代名詞を使って話すことが増える)
・最近の出来事を忘れることがある(みんなで経験した共通の出来事を1人だけ忘れることがある)
・雑談をしにくい(最近の話やみんなの話題についていけないことがある)
・積極性の低下(好きな習い事に行くのを嫌がる、理由をつけて休もうとする)
・約束を忘れる(集合の日時を間違えることがある)
・料理に時間がかかる(物事の段取りが悪くなる)
こんなことを感じたなら、積極的にもも裏歩きウォーキングをやるべきときです。
2025年には、700万人。65歳以上の実に20%(6人に一人)が認知症になる恐れがあると言われています。そうなれば、特殊養護老人ホームや介護職員の数は、一向に足りていません。
この未来をを考えると、自宅で旦那や奥さん、もしくは、お母さんやお父さんを介護していくしかなくなるという事実を示しています。
自分以外の誰かの時間、人生を奪わないためにも、日々のウォーキングは必要な世の中になってきます。
この記事のまとめ
・65歳以上の認知症有病率は、600万人を超える
・2004年に痴呆症という言葉は使われなくなった
・認知症にも種類があり、一番多いのはアルツハイマー型認知症
・認知症の原因としてアミロイドβというタンパク質が関係している
・がんサバイバーは認知症になりづらい(がんの種類による)
・糖尿病の人は、認知症になりやすい
・有酸素運動は、脳の神経伝達物質の分泌を促す
・より多くの筋肉を使うウォーキングが求められる
・このままでは介護施設も介護職員も足りない
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